こんにちは、らいおんです。
医療用医薬品の研究開発について幅広く語っていきたいと思います。
今回は【創薬研究 細胞表面分子】で紹介した膜表面分子の中でも標的としてメジャーな受容体について述べていきたいと思います。
受容体にはリガンドが結合することによりシグナル経路がスタートすることが多いですが、その受容体とリガンドの結合を阻害すればシグナル経路のスタートを阻止することができるので、阻止できるような化合物を見つければ良いわけです。
と、簡単に書きましたが、受容体に限らず、多くのタンパク質は【生物の成り立ち その3-ポリペプチドからタンパク質へ】で述べたとおり、非常に複雑な構造をとっており、リガンドとの結合接点も一点とは限りません。
つまりは、タンパク質と比較して小さな低分子化合物によって受容体とリガンドの結合を特異的に阻害するのは簡単ではないということです。
そこで、数十万の薬の候補になる低分子化合物からなる「化合物ライブラリ」を使って、受容体とリガンドが特異的に阻害できる化合物があるかどうかを「スクリーニング」し、薬の原型となる「リード化合物」を探します。
ここでリード化合物が首尾よく見つかった場合には、次のステージに進むことになります。(この話は、また別の時に。)
受容体は【創薬研究 細胞表面分子】で述べたとおり、細胞表面にあるので、高分子である抗体も受容体とリガンドの結合を阻害するために利用できます。
バイオ医薬品の元となる抗体についても、抗体ライブラリを作成し、その中から目的にあった抗体をさまざまな角度から多角的に選別することになります。
なお、ここまで書いたのは、低分子化合物も抗体も、シグナルを遮断するアンタゴニスト活性(拮抗作用)を持つものについてですが、その反対に、シグナルを送信するアゴニスト活性(作動作用)を持つ低分子化合物や抗体も同様の手順で得ることができます。
病気によっては、シグナルを遮断ではなく送信する必要がある場合もあり、そのような薬も存在します。
受容体のアゴニスト・アンタゴニストの話については壮大な話になりますので、改めて紹介したいと思います。
次は細胞内分子の中で標的としてメジャーな酵素についてお話ししたいと思います。